今回はすこし悲しい話、、、。
でも、とっても暖かい話です。
昨年の梅雨の頃、一人のミュージシャンが亡くなりました。
彼は、当時サックスプレイヤーとして活躍しており、人柄も温厚でやさしくて、フルバンド仲間からも信望がありました。葬儀の時には、50代半ばという早すぎる別れに、大勢の友人達が集まりました。僕もその中にいました。
葬儀はおごそかに進み、棺にみんなでお花を入れてあげる時になって、彼のフルバンド仲間が演奏を始めました。
僕はあんなに悲しくて切なくて、そして心の底から溢れるような演奏を初めて聴きました。サックスもトランペットもトロンボーンもウッドベースもドラムスもピアノもみんな泣いていました。顔で泣いているのではなく、演奏で泣いていました。それを聴いたみんなが泣いていました。僕も涙が止まりませんでした。
サックスのソロになると棺に向かって何かを語りかけるように、吹いていました。きっと別れをおしんでいたり、早すぎるぞって文句を言ったりしていたんでしょうね、、。
そして、最後に棺を斎場から車で送り出す時も、外で二人のトランペッターの静かな演奏が、車が見えなくなってもしばらく続きました。
僕は帰り道、しみじみミュージシャンってやっぱりすごいなあって改めて感じていました。泣き崩れて演奏できなくなるのではなく、崩れそうになる感情に必死に絶えて、演奏で泣いていたんですね。そこの所が凄いと思うんです。「精神の強さ、そして演奏の表現力」これは、長年音楽家として練習努力を耐えて続けて来たからこそ成しうる事なんですよね。
そして、そんな特別な葬儀で旅立った彼が少しだけ羨ましかった。(ご冥福をお祈りいたします)